違法と知らずに1回ダウンロードしただけなら、刑事罰の要件を満たしにくいと考えられます。気づいた時点ですぐ削除し、再ダウンロードしないでください。
- ROMを間違えてダウンロードしたときの、刑事責任と民事責任の考え方
- 「知らなかった」「1回だけ」が通用する条件と、通用しない場面
- すぐにやるべき対処と、筆者が誤クリックで気づいた落とし穴
今回は、著作権法に基づいてROMを誤ってインストールしてしまった場合の危険性について米国の裁判例と比較して紹介します。
ROMを間違えてダウンロードすると、刑事罰を受けるのですか?
刑事罰になるのは、複数の要件がそろった場合に限られると考えられます。1回だけで、違法と知らなかった場合は、要件を満たしにくくなります。
ゲームのROMが刑事罰の対象になる4つの要件
ゲームのROMは、著作権法第119条第3項2号の枠組みで説明されています。4つの要件がそろうと、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(併科もあり)の対象です。
| 要件 | 内容 | 間違えてダウンロードした場合 |
|---|---|---|
| ①違法アップロード | 元のデータが違法に公開されたものである | 公式ストア以外の入手元では満たす場合がある |
| ②有償著作物 | 有料で提供されているソフトである | 市販ゲームのROMは該当しうる |
| ③故意 | 違法と知りながらダウンロードした | 本当に知らなかったなら満たさない |
| ④継続的・反復 | 一度きりではなく繰り返した | 1回だけなら満たしにくい |
音楽・映像は、1回のダウンロードでも対象になるとされています。ゲームなどのROMは、④の「継続的または反復」が加わる点が違います。
「知らなかった」「軽微」「常習性なし」で罰せられないことがある
次のいずれかに当たると、罰せられないことがあります(著作権法第119条第3項2号、刑事事件弁護士相談ナビ)。
- 違法にアップロードされたものだと知らなかった
- ダウンロードした量が軽微である(数十ページあるマンガの1コマ程度など)
- 継続的・反復的ではなく、常習性が認められない
ただし、「知らなかった」という主張が信じてもらえるかは別問題です。故意の有無は、本人の主張だけでなく、客観的な事実や資料から判断されると解説されています(刑事事件弁護士相談ナビ)。私も、ゲーム1本まるごとのROMをダウンロードした場合は、軽微とは認められないと考えています。「軽微」を理由に安心するのは避けた方が賢明です。
ダウンロードした側が逮捕されにくい3つの理由
逮捕されにくいのは事実ですが、「問題がないから」ではありません。
- 違法と知っていたこと(故意)やデータの保管を、捜査機関が証明しにくい
- 親告罪のため、権利者の告訴がなければ起訴できない
- 取り締まりの重点が、サイト運営者など配布側に置かれている
刑事とは別に、権利者から損害賠償を請求される可能性もあります。ベンナビITでは、ゲーム1本の販売価格などを基準にした「使用料相当額」で算定されると解説しています。サイト管理者のアクセスログから、プロバイダへの発信者情報開示請求を経て、個人が特定される場合もあります。
配布側とダウンロード側では、責任の重さがどれほど違いますか?
配布・運営側は、金額も手続きもダウンロード側とは別次元です。直近の例が、2026年9月に米国の裁判所が出した欠席判決です。
2026年9月、約7億円の賠償を命じた欠席判決
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事件 | Nintendo of America Inc. v. Williams(米国ワシントン州西部地区連邦地裁、Case No. 2:24-CV-00960-LK) |
| 判決 | 2026年9月23日(現地時間)に欠席判決。450万ドルの支払いと、海賊版や技術的保護を回避するソフトの配布の恒久的な差止めを命じた(AUTOMATON) |
| 金額の換算 | AUTOMATONは約7億1000万円と換算。換算レートの基準日は記載なし |
| 任天堂の主張 | Switchの海賊版ソフトを無料配布する「ショップ」の運営に関わり、回避ソフトも配布・宣伝した(申立書) |
| 請求額の組み立て | 30作品を対象に、1作品あたり最大15万ドルの法定損害賠償を求め、総額450万ドル(申立書) |
読むときの注意点が3つあります。
- 欠席判決は、被告が応答しなかったときに出る判決です。申立書によれば、被告は2024年8月に訴状が送達された後も応答せず、同年11月に裁判所書記官がデフォルト(応答しなかった事実)を記録していました。
- 被告は、ダウンロードした人ではなく、運営・宣伝した側です。
- 米国の連邦法に基づく判断であり、日本でROMをダウンロードした人に直ちに当てはまるものではありません(※一般的な説明であり、筆者は未検証です)。
2018年に提訴された「LoveROMs.com」「LoveRETRO.co」の運営者らの事件では、1223万ドル(約19億円)の賠償が命じられています(AUTOMATON)。摘発の実例は海賊版ROMサイトの摘発事例にまとめています。
間違えてダウンロードしたら、今すぐ何をすればよいですか?
最初にやるのは、開かずに削除し、誰にも渡さないことです。
今すぐやる5つのステップ
- ファイルを開かない、実行しない、他人に渡さない。
- すぐに削除する。データを残さなければ、再配布を防げ、使っていない証明にもなります。ただし、ダウンロードした事実そのものは消えません(ベンナビIT)。
- ウイルススキャンを実行する。Windows 11 Homeなら、次の手順でフルスキャンができます(※一般的な説明であり、筆者は未検証です)。
Windowsセキュリティ > ウイルスと脅威の防止 > スキャンのオプション > フルスキャン
- ファイル共有ソフト(Torrentなど)を使ったか確認する。使った場合は、ダウンロードと同時にアップロードが起きるため、リスクが上がります(ベンナビIT)。
- 権利者、プロバイダ、警察から連絡が来たら、放置せず弁護士に相談する。
ROMのダウンロードで最も大きな危険は、コンピュータウイルスだと考えています。著作権の問題より先に、端末が感染するおそれがあるためです。ウイルスの種類はこちらで解説しています。
やってはいけない3つのこと

- 共有や再アップロード:違法アップロードは、10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金と、ダウンロードより重い罰則です(ベンナビIT)。
- 意見照会書への虚偽の回答:後の裁判で不利な証拠として扱われるおそれがあります(ベンナビIT)。
- 自己判断での権利者への連絡:不用意な発言や、過大な賠償金の請求につながるおそれがあります(ベンナビIT)。

たとえ違法ROMを探す目的でなかったとしても、このトピックに関心を持たれ調べる方は気をつけてください。閉鎖された違法ゲームDLサイトの経緯のまとめ記事を読んでいる途中で、つい押したリンクが海外のゲームを取り上げているらしいサイトだったことがありびっくりした経験があるので!(笑)
原体験における注意喚起
海賊版の危険性を取り上げる解説記事のリンク先でも、聞いたことのないコンテンツサイトは安全とは限りません。開いたサイトの運営元や内容は確認できておらず、危険性があったかどうかは不明です。対策として、外部リンクは押す前にリンク先のURLを確認する方法があります
ROMを間違えてダウンロードしたときの、よくある疑問
削除すれば、責任はなくなりますか?
削除しても、ダウンロードした事実は消えません。ただし、データを残さないことで再配布や利用を防げ、使っていない証明にもなるため、すぐ削除する意味はあります。
ダウンロードしただけなら、自首したほうがよいですか?
ダウンロードだけの場合、自首は慎重な判断が必要とされています。親告罪のため、権利者が告訴する前に自首しても受理されず帰されることがあり、警察の確認が告訴につながる可能性も否定できません。ファイル共有ソフトを使った場合は早期対応を検討するケースもあるため、弁護士に相談してください。
プロバイダから「意見照会書」が届いたらどうなりますか?
放置せず、期限内に回答してください。回答期限は通常2週間程度で、放置しても開示を回避できる可能性は高くありません。回答内容に迷ったら、弁護士に相談してください。
リンクを開いただけで、ダウンロードしていなければ違法ですか?
ダウンロード(複製)をしていなければ、刑事罰の要件のうち「複製」に当たらないと考えられます。ただし、ウイルス感染の危険は、著作権とは別に考える必要があります。
まとめ

ROMを間違えてダウンロードしてしまっても、違法と知らず、1回だけで、繰り返していなければ、刑事罰の要件を満たしにくいと考えられます。ただし、削除しても事実は消えず、ファイル共有ソフトを使っていた場合は状況が変わります。まず削除とウイルススキャンを済ませてください。
この記事以外にもデジタルやPCに関する実用的な知識を紹介しておりますのでよろしければご一読頂けると嬉しいです。
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参考文献
本文の主張は、次の資料に基づいています。
| 資料 | 本文での対応箇所 |
|---|---|
| 著作権法(e-Gov法令検索) | 第119条第3項2号(罰則・要件) |
| ベンナビIT「ROMダウンロードはバレる?違法DLのリスクと安全な対処法を解説」(弁護士監修、編集部執筆) | 4つの要件、逮捕が少ない理由、対処法、民事責任 |
| 刑事事件弁護士相談ナビ「違法ダウンロードで警察から連絡がきたらどうする?逮捕者はなぜでない?」(弁護士法人若井綜合法律事務所) | 知らなかった・軽微・常習性なしの整理、個人特定の流れ |
| AUTOMATON(2026年9月25日) | 2026年9月の欠席判決、2018年の事件 |
| 任天堂の欠席判決申立書(Document 25、2025年10月3日提出) | 任天堂の主張、請求額の組み立て、手続の経過 |
| 総務省 啓発資料(ゲームソフトの違法ダウンロード) | 補足(平成22年1月施行の改正に言及した資料のため、ROMの刑事罰要件の根拠には使っていません) |
| ねとらぼ(2018年7月22日) | 画像の出典 |





