ゲームの著作権の保護期間は、法人が著作権者の場合「公表から70年」が原則です。ファミコン・PS1世代のゲームはすべてこの保護期間内にあり、”古いから自由に使える”は成立しません。著作権相談員の立場から計算方法と注意点を解説します。
- ゲームの著作権がいつ・どのように消滅するかの計算方法
- 「古いゲーム=著作権切れ」という誤解が危険な理由と正しい法的根拠
- 保護期間が終わった著作物(パブリックドメイン)を活用するための判断基準
ゲームの著作権保護期間の基本を理解しよう
久しぶりに昔のゲームを遊んでいたとき、古い作品なら著作権が切れているのではないかという考えで調べ始め、想像より複雑な権利関係が現代まで続いていることを知りました。その日から保護期間の計算方法を一から整理し直すことにしました。
ゲームの著作権保護期間とはどう定められているのか
著作権の保護期間は、著作権法第51条〜第58条に規定されています。ポイントは著作者が「個人か法人か」によって起算点が異なる点です。
- 個人著作物:著作者の死後70年間保護されます(著作権法第51条)。
- 法人著作物(職務著作):著作物の公表後70年間保護されます(著作権法第53条)。未公表の場合は創作から70年です。
- 起算の方法:保護期間は「死亡した年」または「公表した年」の翌年1月1日から起算されます(著作権法第57条)。
ゲームが「法人著作物」として扱われる理由
市販のゲームソフトの大半は「職務著作(法人著作物)」として扱われます。著作権法第15条が定める職務著作の要件は以下のとおりです。
- 法人その他の使用者の発意に基づいて制作されること
- 法人の業務に従事する者が職務上作成すること
- 法人名義で公表されること
- 契約・就業規則等に別段の定めがないこと
商業ゲームはこれらの要件をほぼすべて満たすため、法人著作物として「公表後70年」が保護期間の原則になります。個々の開発者の死亡時期とは切り離されます。
保護期間計算の3つの重要ポイント
- 起算は「公表年の翌年1月1日」から:1994年に発売されたゲームなら、保護期間は1995年1月1日から70年後、つまり2064年12月31日まで続きます。
- 複合著作物である点:ゲームはプログラム・音楽・映像・キャラクターなど複数の著作物で構成されており、それぞれに著作権が存在します。ゲーム全体の著作権が切れても、収録音楽の著作権が別に存在するケースがあります。
- 2018年改正の影響:2018年12月30日に著作権法が改正され、保護期間が50年から70年に延長されました。改正前に50年で期間満了していたと思われる著作物でも、改正後は再保護の対象になる場合があります。
ゲームの著作権保護期間を正確に計算する
「1980年代のゲームなら50年ルールで切れているはず」という計算を目にしたとき、2018年の法改正を踏まえると話が変わることを知り、改めて整理が必要だと感じました。改正の影響を見落とすと誤った結論になる構造がこの分野の特徴です。
保護期間計算の前に
計算を始める前に確認すべき情報は以下のとおりです。
- 著作権者が法人か個人か(クレジット表記・パッケージ表記で確認)
- 初版の公表年(発売日・初出年)
- 個人著作が含まれる場合、その著作者の没年
- 日本国内での公表か、外国での公表か
法人名義ゲームの保護期間計算手順
最も一般的なパターン、法人名義の商業ゲームの計算手順を示します。
- 公表年の確認:例として「1994年発売」のゲームを使います。
- 翌年の1月1日を起算日とする:1994年発売 → 起算日は1995年1月1日
- 70年を加算する:1995年 + 70年 = 2065年
- 保護期間満了日:2064年12月31日まで保護される(2065年1月1日から自由利用可能)
ファミコン全盛期(1983〜1994年)に発売されたゲームはすべて2053〜2064年まで保護されており、現時点では一切が著作権の保護下にあります。
※注意点:「発売が古い=著作権切れ」ではない!
よくある誤解として「1980年代のゲームはもう著作権が切れているはず」というものがあります。しかし2018年の法改正で保護期間が50年から70年に延長されたため、旧ルール(50年)で期間満了になったと思われていたゲームの多くが、改正後の70年ルールで再び保護対象になっています。
海賊版ソフトについてのリスクは、こうした「切れているはずだった」という誤解から発生するケースが少なくありません。
※現実的な計算例:1975年発売のゲーム → 旧50年ルールなら2026年1月1日から自由利用可能のはずだったが、2018年の改正により2046年1月1日まで保護期間が延長されています。
複合著作物としてのゲームの保護期間を正確に把握する
“ゲーム全体の著作権が切れても、収録音楽の権利が残っている”という話を初めて聞いたとき、一つのゲームに複数の権利者がいる構造を改めて実感しました。プログラムを作った会社と音楽を提供した会社が別法人の場合、それぞれの保護期間が独立して存在します。
個別要素の権利確認が必要なケース
以下のケースでは、ゲーム全体の著作権保護期間とは別に、個別要素の権利確認が必要です。
- 外部の音楽レーベルが楽曲を提供している場合:ゲーム本体の著作権と音楽の著作権は別に管理されています。
- キャラクターの著作権が別会社に帰属する場合:ライセンス元と開発会社が異なるゲームでは、キャラクターの使用権が別途存在します。
- 個人クリエイターが著作権を留保している場合:クレジットに「〇〇(個人名)」と記載され、個人として著作権を持つ場合は死後70年が適用されます。
個人著作が含まれる場合の保護期間計算手順
例として「1990年に発売したゲームのBGMを、個人名義で作曲した〇〇氏が2010年に死亡した」というケースを計算します。
- 著作者の死亡年:2010年
- 翌年の1月1日を起算日とする:2011年1月1日が起算日
- 70年を加算:2011年 + 70年 = 2081年
- 保護期間満了日:2080年12月31日まで保護される
この場合、ゲーム本体(法人著作物)の保護期間(2060年末まで)よりも、BGMの保護期間(2080年末まで)の方が長くなります。ゲームを利用する際には、もっとも長い保護期間が満了するまですべての要素の権利が存続すると考える必要があります。
2018年法改正の影響を理解する
2018年12月30日施行の著作権法改正では、保護期間が著作者の死後・公表後ともに「50年」から「70年」に延長されました。この改正は「TPP整備法」によるもので、主要な影響は以下のとおりです。
- 改正時点でまだ旧50年ルールの保護期間中だったものは、そのまま70年ルールに移行します。
- 改正前にすでに50年ルールで期間満了していたものは、原則として70年ルールが遡及適用されません。
- ただし経過措置として、2018年12月30日時点でまだ旧50年ルールの保護期間内にある著作物はすべて70年に延長されます。
ゲーム著作権の保護期間のケース別チェックシート
| ケース | 適用ルール | 計算式 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 法人名義の市販ゲーム(2018年以降) | 公表後70年 | 公表年+1年の1月1日から70年 | 最も一般的なケース |
| 法人名義の市販ゲーム(2018年改正以前・旧50年期間内) | 公表後70年(延長適用) | 公表年+1年の1月1日から70年 | 旧50年では満了していたが延長対象になったケースあり |
| 個人名義の同人ゲーム | 著作者死後70年 | 死亡年+1年の1月1日から70年 | 著作者が存命中は保護期間が終わらない |
| 外国ゲームの日本での利用 | 日本の著作権法が適用 | 条約に基づき日本国内での利用には日本法 | 海外で著作権が切れていても日本国内では保護対象のケースあり |
| 権利者が倒産・消滅したゲーム | 保護期間は消滅しない | 継承先・管財人等が権利を保持 | 「権利者不明=自由利用可能」は誤り |
著作権保護期間に関するよくある誤解と回答
正確な知識を持った上でゲームを楽しみたい方のために、代表的な誤解を整理しています。
Q1. 「著作権表示(©)がないゲームは著作権がない」は本当?
誤りです。
日本は「無方式主義」を採用しており、著作権は著作物が創作された時点で自動的に発生します(著作権法第17条第2項)。©マークの有無・著作権登録の有無は著作権の存在に影響しません。©マークは著作権者の主張を示す慣行的な表示であり、法的な発生要件ではありません。
Q2. 「外国のゲームは日本の著作権法の対象外」は本当?
誤りです。
日本はベルヌ条約・万国著作権条約・TRIPS協定に加盟しており、加盟国の著作物は内国民待遇の原則により日本国内でも日本の著作権法で保護されます。外国のゲームを日本国内でコピー・配布・改変する行為には日本の著作権法が適用されます。「海外サーバーに置いてあるから日本法は関係ない」も同様に誤りです。日本国内で行うダウンロード・利用行為には日本法が適用されます。
Q3. 保護期間中のゲームを合法的に使う方法はあるか?
あります。以下のいずれかの方法が合法的な利用手段です。
- 権利者からライセンスを得る:権利者に申請し、使用許諾を得ることが最も確実な方法です。
- 私的複製の範囲内での利用:著作権法第30条が認める個人・家庭内での複製は、一定の条件下で認められます。
- 引用の要件を満たす利用:批評・紹介目的での必要最小限の引用は著作権法第32条で認められます。
- 権利者が公認している範囲内での二次創作:ガイドラインで明示的に許可された範囲であれば活動できます。
エミュレータ自体の合法性と権利者の対応についてはYuzu訴訟の事例が参考になります。「何がアウトか」の判断基準を具体的な訴訟から学べます。
まとめ

ゲームの著作権の保護期間について整理します。「発売が古い=著作権切れ」は誤りで、2018年の法改正で多くのタイトルの保護期間が延長されています。権利者が倒産・消滅しても著作権は消滅せず、継承先が権利を保持します。おすすめなレトロゲーム特集も参考にしながら、権利関係を踏まえた安全な遊び方を探してみてください。
この記事以外にもデジタルやPCに関する実用的な知識を紹介しておりますのでよろしければご一読頂けると嬉しいです。
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